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移住の決め手
「子どもたちの進学がタイミング」
山田さんファミリー(移住歴4ヵ月)の移住の決め手
家族構成(移住当時)
山田洋一さん(49歳)
/萌子さん(33歳)
/春さん(9歳)
/環さん(6歳)
/歩さん(3歳)
移住歴:4ヵ月(2025年4月~)
移住エリア:東京都中野区→南房総市富山地区
「いつか移住してみたい」。ただ漠然と、そんな風に考えている人は多いのではないでしょうか。移住のタイミングが、いつやって来るのかは人それぞれ。訪れたタイミングを逃さず行動に移した、山田さん家族を紹介します。
子どもたちの進学のタイミングで
都内にある一軒家で子どもたち3人と暮らしていた山田さん家族は、決して東京の暮らしが嫌だったわけではありませんが、住宅街だったため、自宅の塀の向こうはすぐに隣の家があり、子どもたちの声が近所迷惑にならないか気にしながら生活をしていました。
住宅街で遊ぶ子どもたち
「いつか、そういうことを気にせず暮らせる場所に住みたい」と思っていましたが、移住への明確な理由やこだわりはありませんでした。長男の環さんが小学校へ、次男の歩さんが幼稚園へ上がることを考えたとき、『移住するなら今では?』」と思った2023年の11月、移住を本気で考えはじめました。
同年、房総半島を3日かけて車で回ったときの印象が良く、“南房総市”という名前の響きにも惹かれた山田さん。
「“南”とつくとカッコ良くていいですね。都内へのアクセスも気候も良さそうなので、移住先の候補にあがりました。そして、Webで見つけたのが『トライアルステイ』です」
館山市・南房総市トライアルステイ
観光ではなく、自分に合ったテーマで滞在し、現実的に移住を検討するためのプログラムが、「館山市・南房総市トライアルステイ(以下、トライアルステイ)」です。2024年2月、トライアルステイに参加した山田さん家族は、事前に希望していた保幼小中一貫校「南房総市立富山学園」を、トライアルステイ案内人とともに見学しました。豊かな自然に囲まれた「大房岬(たいぶさみさき)自然公園」で開催されたイベント、「日帰りキャンプ教室 炎の達人」に参加し、子どもたちと一緒に火起こしを学びながら実践。同じようにトライアルステイで移住した家族との交流も楽しみました。
「今までと違う環境での暮らしに漠然とした不安がありましたが、先輩移住者の家に伺ったとき、こんな暮らしがしたいと思っていた現実を見ることができました。様々な人から、台風を含めた自然災害や、虫や獣の問題などについて実際に話を聞けたことで、自分たちでもやっていけそうだと思えました。それをきっかけに、移住に対して心配事よりも期待の方が大きくなりました」
子どもたちを富山学園に通わせたいと考えた山田さんは、富山学園の学区に絞って本格的に家探しを始めます。条件は、家族が新しい環境での生活に合わなかったときのことを考えて賃貸物件とし、周囲への音を気にせず、ニワトリなどの動物を飼える広い敷地のある家でした。家探しは難航しましたが、さまざまな縁が重なって紹介してもらった今の家を見た瞬間、たくさんのイメージが広がり、「ここで生活がしてみたい」と強く思ったそうです。18年間空き家だった家の片付けをするために10月から通い始め、壁の塗装などは自分たちで行って、2025年4月、晴れて南房総市民になりました。
リフォームを終えた南房総の自宅で
「家が決まるまでは焦りや不安が大きかったのですが、決まってからはずっと“楽しい”が続いている」と、当時を振り返りながら話す萌子さんの笑顔が印象的でした。
「来て良かった」と、毎日思える環境
スクールバスで通学する子どもたちは、都内にいるときよりも1時間早く家を出るようになり、早寝早起きの生活になりました。
以前は運動不足解消のためにランニングをしていた洋一さんですが、南房総では自宅の敷地内の環境整備に汗を流しているので、ランニングをする必要がなくなりました。元々あった池を囲っていた石を移動し、たき火やバーベキューができるスペースを設置。木や竹を切って風が入るようにし、陽射しが届かなかった場所にも光が差すようになりました。
自宅の庭でたき火と花火を楽しむ子どもたち
「従妹の家族たちが遊びに来たときは、ここでバーベキューをしました。夏には市民プールに行く感覚で海に何回も行って。以前は1日かけて海へ出かけていましたが、今はサクッと行けて、生活の中に海水浴があるのがいい。涼しくなったら、伊予ケ岳などの山登りも楽しみです」と、洋一さんが南房総の魅力を教えてくれました。
移住前は畳一畳分の畑で野菜作りにチャレンジしていた山田家。将来的には敷地内にブランコなどの遊具を作り、ニワトリを飼い、畑で野菜作りをするのが目標ですが、一足早く友だちと畑を借りて、野菜作りにも挑戦しています。
長女の春さんは、小学校3年生で4クラスある学校に通っていました。富山学園の4年生は、1クラスだけです。少人数にはメリット・デメリットの両方がありますが、ゆっくり人になじむタイプの春さんがクラスに溶け込めるか、山田さん夫妻は心配していました。当初は、「東京が良かった」と言っていた春さんですが、夏休みが始まる前に近所の小学生と仲良くなり、今では毎日のように遊んで楽しそうに過ごしています。
長男の環さんは乳アレルギーがあるので、南房総市の米飯給食にも助けられています。「美味しい給食も学校に通う楽しみの一つになっているようです」と、山田さん夫妻は心配事が解消してほっとした様子でした。
移住検討者へアドバイス
「とにかく行動すると、見えてくるものがある」
「より良い形を求めるために、選択肢は多い方がいいと思います。トライアルステイへの参加や、不動産屋さんへの相談を重ねるうちに、偶然のご縁が重なって今の家に辿り着きました。トライアルステイは、自分たちだけで動いていたら出会えないような人たちとの繋がりができて本当に良かったです。Webだとイメージだけですが、実際に体験してみるのが大事だと思います。たとえ今の暮らしに不満がなくても、10年後の生活をイメージしたときに、もっとワクワクする方に進みたいと思ったなら、移住を考えるきっかけにするのも良いと思います。」(本記事の内容は2025年取材当時のものです。)