• ホーム /
  • 南房総市特集 /
  • 大房岬自然公園ってどんなところ?南房総の自然と人をつなぐレンジャーが活躍

Note

大房岬自然公園ってどんなところ?南房総の自然と人をつなぐレンジャーが活躍

南房総市富浦地区にある大房岬(たいぶさみさき)は、海と森がつながっている自然体験フィールドです。今回は、東京ドーム約9個分(41.3ヘクタール)もの広大な敷地を誇る大房岬自然公園の魅力について、自然体験イベントやレンジャーとして働くスタッフの声を通して紹介します。

大房岬自然公園とは

上空から見た大房岬自然公園

 

富浦新港から坂を上りきった先に広がる大房岬自然公園は、標高約80メートルの台地状の岬です。敷地には湧き水を水源とする不動滝があり、小川が流れ、池にはモリアオガエルなどの生き物が生息しています。森を通り抜けると、ビーチコーミングができる砂浜や磯遊びができる磯場があり、森と海のつながりを感じることができます。この恵まれた自然環境は、市内の小中学校で子どもたちの郷土愛を育むために展開している、「南房総学」の学びのフィールドの一つにもなっています。

坂を上りきった公園入口から望める富浦湾の景色

常緑樹の木漏れ日に包まれる散策路

森を抜けた先に広がる海岸/タイマイ浜

引き潮時は絶好の磯遊びのポイント/オオトリ浜

 

らせん階段を上る「展望塔」からは360度景色が見渡せ、三浦半島や伊豆半島、晴れた日には富士山や伊豆大島まで一望できます。「第2てんぼう台」からは、夕日と富士山が望めます。春にはスミレやツツジのほか、約250本のオオシマザクラやソメイヨシノが咲き、夏はアジサイやスカシユリ、秋にはイソギクやつわぶき、冬にはスイセンやサザンカなど、季節ごとの花々を楽しむことができます。園内にはキャンプ場もあるので、早朝はバードウォッチング、夜には星空観察も可能です。

展望塔からの眺め

 

また、東京湾の入り口に位置するため、かつては戦争に備えて多くの軍事施設が築かれました。その一つである探照灯跡地は100年前につくられたもので、大自然の中に今も戦争遺跡が残っています。

要塞跡地

 

南房総市大房岬自然の家について

 

自然の中で宿泊や野外活動を行い、仲間と協力することの大切さや、環境について学べる場として、昭和55年に「千葉県立大房岬少年自然の家」として開所しました。平成27年度に「南房総市大房岬自然の家」に名称を変更し、「NPO法人千葉自然学校」が指定管理者として、教育旅行や体験プログラムなどの利用者を受け入れ続けています。

施設内の壁一面に大房岬の魅力がぎゅっと詰まった絵が描かれています。

 

園内にある施設「大房岬自然の家」には宿泊室や大食堂、研修室や創作室、プラネタリウムなどがあり、体育館や野外炊飯場も備わっているので、学校や企業、サークルなどの団体利用が可能です。宿泊団体向けのプログラムは、地域の職人を巻き込んだものを含めると60種類以上ありますが、個人でも予約・参加できるプログラムが多数あります。

 

個人で参加できるプログラム

コーステアリングの様子

 

夏に人気があるプログラムの一つは、「海岸線を攻める!!コーステアリング」です。小学3年生以上の子どもたちで、海岸線の岩場を突き進み、海へダイブ。飛び込む瞬間は怖くても、勇気を出して飛び込んでみたら最高の笑顔に包まれます。

勇気をふりしぼって海にジャンプ!

 

家族でキャンプをしてみたいけれど、道具もないし何から始めればいいのか分からない。そんな人には「ファミリーキャンプ教室」がおすすめです。着替えなど最低限の身の回りの装備だけを用意すれば、テントの立て方や火の起こし方など、キャンプの基本を教えてもらいながらキャンプを体験できます。アウトドアのプロからしっかり学んでおけば、次回からは大房岬にあるキャンプ場に来て、自分たちだけでファミリーキャンプを楽しめるようになるでしょう。

ファミリーキャンプ教室の様子

 

日帰りで気軽に参加したい人には、「日帰りキャンプ教室 炎の達人」がお勧めです。火起こしのプロからマッチや火打石のような着火道具、ファイヤースターター(メタルマッチ)を使った着火方法を学び、自分で火を育て、その火を使って燻製を作ったり工作をしたりできます。

夜の大房岬をガイドと一緒に歩く「岬のナイトツアー」や、「ウミホタル&夜の海の生き物観察ツアー」、「大房忍者修行」など、季節ごとにさまざまなイベントを開催しているので、Webサイト南房総市大房岬自然の家の、イベントのご案内をご確認ください。

 

地元の小学生を対象にした体験活動「岬の楽校(がっこう)」

「南房総市学校外教育サービス利⽤助成券」対象事業にもなっている「岬の楽校」は、自然の中で遊びを通して学べるナイフワークや火起こし、磯釣りやアウトドアクッキングなどのプログラムが用意されています。

ナイフワークと火起こし体験

 

8月に開かれる「できることは自分達次第? ~高学年キャンプ~」を担当しているのは、副所長の花嶋桃子さん。新卒で仕事に就いたときからこのキャンプを担当し、今年で12年目。子どもたちからは、キャンプ名の「ぽにょ」で親しまれています。子どもが好きな花嶋さんは、大学の教育学部在学中にキャンプのボランティアをしたことがきっかけで、ここで働くことになりました。

大房岬自然の家 副所長の花嶋桃子さん

 

「自分ではできなかった小さい子が、立派になっていく瞬間を間近で見られることは、他ではなかなかありません。親でも先生でもなく、『第三の大人』といういい距離感での関係性があります」と、岬の学校の魅力について話す花嶋さん。小学校卒業後もこのキャンプに関わりたいという子どもたちが、スタッフとして一緒に活動してくれることに喜びを感じています。

磯や海で遊ぶキャンプの参加者たち

 

「岬の学校」に参加した子どもが小学校を卒業するとき、花嶋さんに渡した手紙には、「ぽにょは、一緒にいて安心できる人でした」と書いてありました。仕事なので、大変なことも辛いことも当然ありますが、子どもからもらった手紙や、「おもしろかったよ、ありがとう」と言ってくれた瞬間が「忘れられない」と言います。

花嶋さんのお気に入りの場所は、森を抜けた先に広がる「南芝生園地」。空と海と大地を一度に楽しめる場所で、「毎日通っていても毎回、海がきれいだなと思います」と教えてくれました。

南芝生園地

 

訪れる人との交流がやりがい

大房岬自然公園 公園長の山口亮介さん

 

園内にある「ビジターセンター」を拠点に仕事をこなす、大房岬自然公園 公園長の山口亮介さんは、「こめ」というキャンプネームで親しまれています。「自分が好きな仕事をしている姿を、子どもに見せたい」という動機から、この仕事に就きました。ビジターセンターの仕事は、キャンプ場受け入れ対応や団体利用者の調整、イベント企画・運営、草刈りや整備作業など、多岐にわたります。

園内にあるビジターセンター

 

大房岬自然公園は、「森のようちえんはっぴー」のメインフィールドにもなっています。園児たちと生き物の話をしたり、イベントやキャンプに訪れる人たちと交流したりする時間が、山口さんの好きな時間であり、やりがいを感じているポイントとのこと。訪れる人の年齢層は幅広く、幼児から70代の方まで、いろいろな方と接することができます。

大房岬がメインフィールドの「森のようちえんはっぴー」

 

山口さんから見た大房岬の魅力は、「フクロウやアナグマ、池にはモリアオガエルやサンショウウオがいて、森と海と生き物がぎゅっと凝縮しているところ」だと言います。

「春は生き物が一気に動き出して、花も楽しめます。夏は海と、カブトムシやクワガタムシのキャッチ・アンド・リリース。秋は4種類のどんぐりを拾えます。冬は富士山や東京の街が遠くまできれいに見えて、夜には星空が一段と美しく見えます」

海岸園地からの天の川

 

ビジターセンターでは、キャンプの備品販売やレンタル品の受け付けだけでなく、大房岬の自然紹介や歴史の展示もあるので必見です。山口さんのお気に入りの場所は「モーリー池」。そこにいる生き物を狙ってヘビが来たりと、生き物の気配を濃厚に感じられる場所です。

モーリー池

 

人と自然をつなげる場所

大房岬自然の家 所長の神保清司さん

 

大房岬自然の家の所長であり、レンジャーの一人としても活躍している神保清司さんのキャンプ名は「じん」。開所当時、日本各地から集まったメンバーの1人です。自然の家は、圧倒的に学校での団体利用が多いそうですが、個人的に来る人はどのように楽しめるのでしょうか。

「平日は学校、土日は一般の親子向けというイベントの作り方をしているので、個人利用の方たちは土日の親子向けイベントに参加していただいて、楽しみ方を知る入り口みたいな感じでご利用いただけます」

ここでの仕事が好きだからこそ、この仕事を選んでいると断言する神保さんが、子どもたちに必ず聞かれるエピソードについて話してくれました。

「『ここに住んでるの?これお仕事なの?』って、子どもたちみんなに聞かれます。子どもたちがここで過ごしたあと、帰るときには『どうやったらこの仕事できるの?』って聞いてくる子がいて、うれしいです」

ツリーイング体験をする子どもたち

 

この仕事をやっていて良かったと感じた出来事として、令和元年房総半島台風の際のことを挙げました。

「台風のときに地元の人たちから、『お前らがここをやってくれてて良かった』って言ってもらえたとき、すごくやりがいがあると思いました。お互いの顔を知っていて、つながっている距離感。それが災害のときにはっきりして、この仕事をここでやっていて良かったなと感じました」

大房岬自然の家は多田良地区にあり、津波が来た場合、岬の下にある地区は津波にのまれると予測されているため、非常物資はすべて自然の家に保管されています。そのため、令和元年の台風のときも、食料を出すために区長や役員の方が自然の家を訪れました。自然の家の職員も軽トラックを出して、物資の配布を手伝ったそうです。

「困りごとや手伝いごとがあると、よろず相談みたいな感じでここに来ます。若いスタッフもいるので、『一緒にやりますよ』って手伝うと、お互いの信頼関係が生まれます。田舎には、持ちつ持たれつな組織がすごく必要だと思います」

そう話す神保さんのお気に入りの場所は、「不動滝」。あまり人がいないので、じっとしていると鳥がそばにとまることもあるそうで、「生き物が行き来している雰囲気が好き」と教えてくれました。

この日は水量が少なかった不動滝

 

 

都会ではもちろん、南房総に住んでいてもなかなか味わえないような自然や、体験プログラムが大房岬にはたくさん詰まっているので、ぜひ訪れてみてください。

 

※本記事の内容は2025年取材当時のものです。

 

【関連リンク】

大房岬自然公園

大房岬自然の家

大房岬自然の家イベントページ

南房総らしい子育ての一歩をここで。森のようちえんはっぴーの魅力

「南房総に残っても、離れても、どこへ行っても」子どもの支えとなる郷土愛と学力を育む

ポスト

シェア

南房総市ならではの暮らしの魅力や自慢の情報をお届けします。

大房岬自然公園ってどんなところ?南房総の自然と人をつなぐレンジャーが活躍

南房総の子育てに、そっと寄り添う場所 ~「ほのぼの」で、親子のつながりと安心を~

百姓のおむすび屋「とんび茶屋」始動! 元地域おこし協力隊 小林朋子さんにインタビュー

~南房総エリア最大級の公園~なみはらくじらパークがオープン!

南房総の海に生きる漁師の声と海で働く魅力 ~後編(外房編)~

南房総の海に生きる漁師の声と海で働く魅力 ~前編(内房編)~

レースエンジニアから農家へ。移住して新規就農した夫婦と、それを支援する南房総市の施策

南房総の有機農業の礎「三芳村生産グループ」~安心・安全な食べ物を届けたい~

福祉と教育の垣根を取り払い、ワンストップで子どもを継続して見守り育てる南房総

岩井海岸から地域活性化に取り組むローカルパワー。移住者たちと紡ぐ岩井の魅力と新たな未来

子どもたちの読書活動のサポート ~図書館からスタートする南房総らしい子育て~

新しい形のつながりを。自給自足スキル×地域コミュニティ×地域課題を学ぶ「ヤマナアカデミー」

南房総的自転車ライフ。初心者も上級者も利用する「HEGURI HUB(ヘグリハブ)」の魅力

自分らしいアプローチで突き進む 南房総農業のフロントランナーたち

南房総市での就農を熱く応援します!南房総農業支援センター

VIEW ALL