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自分らしいアプローチで突き進む 南房総農業のフロントランナーたち

南房総市には農家は2,592戸(令和2年度農業センサス)。従業員を抱える大規模農家、家族で営む小規模農家、兼業農家、南房総らしい作物に取り組む農家、有機農業を継続する農家、新しい作物にチャレンジする農家など、それぞれに熱意やこだわりを持って頑張っています。
今回は、南房総市の農家を支える南房総農業支援センターに聞いた「南房総農業のフロントランナーたち」をご紹介。南房総でひときわ誇りをもって農業へアプローチしている先人たちをご紹介します。

日本人の『主食』を胸を張って支えたい/株式会社岡本農園 岡本秀和さん

25ヘクタールの田んぼやライスセンターなどを持つ岡本農園。農業の効率化や機械化を積極的に進め、自身も大型トラクターを操る代表の岡本秀和さんにお話を聞きました。

 

就農の経緯を教えてください

「40年くらい前は三芳エリアは牛を飼いながら田んぼをやる農家が我が家をはじめ、たくさんいました。それが時代とともにお米は自分で作るものから買うものへ変化していったんですね。ウチは農家を続けていて、31年前にお米の苗を作る『育苗センター』をいくつかの農家と一緒にはじめました。お米にとって苗はすごく重要なもので、苗の出来がその年のお米の品質や収穫の半分を決めてしまうという例えの『苗半作』という言葉があるくらい。そんな仕事を自分はいつか継ぐと思っていたのですが、親は「大変な仕事だから」と反対していて。大学やアメリカでの留学では農業と直接関係のない勉強をしていました。ただ、状況を考えると早めに継いだ方が良いのでは?という思いが出てきて、25歳で南房総に戻って来たんです。当時はまだ親は農家を継ぐことに反対していたのですが、一緒に仕事をしながら認めてもらった感じですね。」

 

営農スタイルを教えてください

「育苗と稲作とライスセンター、ナバナとトマトなども栽培しています。作業は少人数で広い農地を作業できるよう機械化を進めています。大型機械はもちろん、ドローンなど新しいものも試験的に取り入れています。正社員は2名で、春の育苗の時期は人を増やして対応しています。できるだけ、地域の人を雇用しています。」

コンバインで稲を刈る岡本さん

 

こころがけていることはありますか?

「時代によって必要なものも変わり、嗜好品としての食べ物もたくさんありますが、日本人の『主食』がお米であることは大切なことだと思います。地域の一員として社会の一員として、主食のお米がお腹いっぱい食べられることをサポートしていければと、行動しています。農地を手放す人も多くなってきてそれを利用し続けることも大切ですし、行政との協力や農家同士の連携も重要だと考えます。その時々に必要なことは何かを考えていきたいですね。」

 

今取り組んでいることやこれから取り組みたいことはありますか?

「南房総市の米飯給食にもお米を提供していますし、地域の子どもたちに農業を知ってほしいという気持ちで、通年で学校からの見学を受け入れています。通年というのがポイントで、田植えや稲刈りだけでなく、育苗の様子なども見てもらって、実際の仕事がイメージできるようにしています。田植えや稲刈りも大きな機械で作業していることを知ってもらう。知識だけではなく、現実の仕事としての可能性を見せて、大人になって地域に戻ってきて、ここで暮らしここでこんな仕事がしたいと思ってもらいたいです。それが大人の責任でもあると思うので。」
「今ちょうど取り組み始めたのが、畜産業との連携です。農地を使って酪農用のエサを栽培します。農地の活用とエサの確保、両方にメリットのある取り組みで、南房総には酪農家も多いのでこれからさらに連携を本格化させたいと思っています。」

 

就農希望者へメッセージをお願いします

「自然が相手の職業なので、サラリーマンと同じように時間を区切って働くことは難しい職業です。また、自然だけではなく周りの人との協力など、人も相手にしなければなりません。こういった自営業者の大変さはありますが、地域への貢献ができる職種なので、頑張ってほしいと思います。」

 

季節を伝える南房総の名産を自分の地元で継いでいく/御子神農園 御子神昭則さん

南房総を代表する早春の味覚といえば『食用ナバナ(菜花)』。千葉県は食用ナバナ生産量全国1位で、その生産のほとんどは南房総エリアが担っています。そんな食用ナバナを丸山エリアで計画的に生産する御子神農園の御子神昭則さんにお話を聞きました。
御子神農園公式HP https://mikogaminouen.com/

 

就農の経緯をおしえてください

「家がもともと農家だったので、小さいころから農家になるんだよと言われていました。自分自身もあまり抵抗はなかったですね。高校は南房総で、卒業後は滋賀県にある農業系専門学校へ。他地域の農家で手伝いをしたりして、21歳の時に南房総に戻ってきました」

 

営農スタイルを教えてください

「ウチは食用ナバナが主体です。食用ナバナは実は産地が少ない作物なのですが、南房総の気候は合っていて全体の生産量も多いと思います。今も増産してほしいというオファーがありますよ。従業員は正社員が4名でその他を合わせて20名。1月~3月がメインの収穫期なので、その時は従業員のほかに、季節に合わせて労働する場所を替えて仕事をしている季節労働者や地元のアルバイトさんを加え、60名程度で収穫期を乗り切っています。今は農業系の求人サイトなどを使って人を集めています。外国人の従業員もいますよ。」
「夏は地元スーパーなどを中心に、クウシンサイやツルムラサキ、ゴーヤなどを生産し出荷しています。ナバナだけだと手が空いてしまう期間が出来てしまうので、その期間の作業や収入をどう安定させるかを試行錯誤しながらやっています。」

食用ナバナを摘む御子神さん

 

こころがけていることはありますか?

「どこの地域も同じだと思いますが、農家の高齢化が進んでいるのが心配ですね。耕作放棄地が増えてしまうとイノシシなどの獣害のリスクが高まるので、農地の維持は大変ですが大事なことだと考えています。ウチでも周囲の農家さんから農地委託の依頼があったときは地域は限りますが、できるだけ検討するようにしています。」

 

今取り組んでいることや取り組みたいことはありますか?

「南房総市のいくつかの農家でナバナネットというネットワークを10年以上前に立ち上げ、販路拡大などに努めています。また、南房総市などからの農業研修の受入れ農家となるなど、人材育成の大切さも感じています。実際、研修生を受け入れていく中で、作業の見直しや研修スキルなど、自分自身や会社にもプラスになることが多くメリットがあると思っています。」

 

就農希望者へメッセージをお願いします

「就農するにはまず、地域との関係を大事にすることが必要なので、そういった心構えをしてほしいですね。また南房総市は農業に対する取組が手厚いので、心強いと思いますよ。若い世代にも南房総の農業を背負ってほしいので、私も応援しています!」

 

三芳村の有機農業の歴史に学び、実践する/やぎ農園 八木直樹さん・八木幸枝さん

学校給食でも使われている黒ゴマを選別する八木ご夫妻

 

南房総市の旧三芳村エリアは、実は全国的にも知られる有機農業の先駆地で、今も有機農業に取り組む農家が点在しています。27年ほど前、旧三芳村時代に有機農家を志してやってきたのが八木直樹さん。今では有機農業への新規就農をサポートする存在になった八木さんにお話を聞きました。
やぎ農園公式HP https://www.yaginouen.com/

 

就農の経緯を教えてください

(直樹さん)「私は東京都の出身で、以前は看板職人として働いていたんです。1993年の大凶作をきっかけに、日本の食の将来に関心を持ち、有機農業にたどり着きました。茨城で農業の基礎を勉強したのち、当時の三芳村で就農を決めました。三芳村に決めた理由は有機農業の先駆者たちが大勢いらっしゃったからですね。実際にその方たちからたくさんのことを教わりました。」
(幸枝さん)「横浜市で保育士として働いていた時、子どもたちとかかわる中で食の大切さを感じ、だんだんと自分の手で安心な食べ物を作りたいと思うようになり、有機農家を訪ねたり、研修を受けたりしている中で、夫と出会い、結婚して三芳村へやってきました。」

 

営農スタイルを教えてください

「有機農業で、田んぼ3ヘクタールと畑1.5ヘクタールでやっています。畑では季節に沿った作物を少量多品目で作っています。わが家の自給の延長で直接つながっている方へ『おすそわけ』する感覚で届けています。」

 

こころがけていることはありますか?

「農地を預かることも増えたのですが、面積が増えても丁寧に作業することを心がけています。農薬を使わないことによって、土の中の微生物が活発になるからなのか、だんだん土が良くなったり、田んぼの雑草が生えにくくなったりするんですよ。」

 

今取り組んでいることや取り組みたいことはありますか?

「わが家では手作業を大切にしています。耕作面積が増えてもそのやり方は変えたくありません。そのためにはどうしたらよいかを考え、やぎ農園パートナー制度を作りました。手が空いた時に都合に合わせて農作業に来てもらい、生産できたものを共有して食べるというシステムですが、安房地域にお住まいの方が30人以上登録していて、楽しいと言ってくれているのが嬉しいと感じています。また、農業研修生の受入れも行っています。」
「それから、南房総市の大房岬で活動する森のようちえんはっぴーの活動を受け入れて親子で田んぼに入ってもらったり、通年で田んぼに関わって育てて食べる『田んぼの学校』という取組もおこなっています。農業と食べることをつなげ、実感できる体験になればと思います。『農業って大変だ』と思われるかもしれませんが、本来は『楽しい』ものです。作物と向き合うことで得られる喜びを感じてもらえると嬉しいですね。」

森のようちえんはっぴーの子ども達に田植えを教える八木ご夫妻

 

就農希望者へメッセージをお願いします

「農業は、作物を育てながら自分たちの暮らしをつくり、地域の風景をつくるしごとで、様々なよろこびがあります。地域を大切にでき、田畑を丁寧に耕す人なら周囲の人たちが放ってはおきません。私たちもこちらに来た時に、本当に色々教えてもらい、無償の愛を受けたと感じました。情熱と謙虚さを持って来てくれる方を私たちは歓迎したいです。」

 

それぞれのフィールドでそれぞれに輝く南房総農業のフロントランナーたち。そんな先輩たちの背中を見ながら、南房総市で就農を目指してみてはいかがでしょうか?

 

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