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「南房総に残っても、離れても、どこへ行っても」子どもの支えとなる郷土愛と学力を育む

南房総市では、「南房総に残っても、離れても、どこへ行っても支えとなる、故郷への誇りと強い思い」と「南房総に残っても、離れても、どこへ行っても通用する学力」を持つ子どもの育成を目指しています。今回は南房総の教育の柱となる、ふたつの取り組みについて、掘り下げてご紹介していきます。

「南房総学」が育む子どもと地域

「南房総学」は平成22年に始まった取り組みです。「故郷への誇りと強い思い」があればどこででも頑張ることができ、人生を支える柱となるという考えの下、子どもたち自身が住んでいる南房総に対しての郷土愛をゆっくりと育む学習を小中学校の9年間で取り組んでいます。

市内小中学校の総合的な学習の時間や特別活動の一環として、各学校が立地する地域の特性を活かし、自然や産業、伝統文化などを学んでいます。食農教育、一次産業を中心とした実体験をともなう学習に力を入れ、各学校の自主性、地域との連携を重視しているのも特徴です。地域ならではの体験は、南房総にしかない価値を子どもたちに感じさせ、誇りと強い思いを育みます。

地域との連携(一次産業従事者・観光業従事者・高齢者・福祉関係者・郷土史家など)では、地域の大人が子どもたちと関わることで、やりがいや生きがいがうまれ、地域や大人が活性化するというメリットも。
良い影響が循環する仕組みとなり、子どもとともに地域も育てることができる取り組みなのです。

南房総学:富山(とみさん)の登山道整備

 

各小中学校で展開される「南房総学」

「南房総学」の実施では、地域の自然や産業の特性、地域の人との連携、学校の自主性が重視されています。
そのため、各学校によってバラエティ豊かな「南房総学」が展開されています。

令和4年度「南房総学」一覧(予定・中止事業含む)

マリンアクティビティ体験紹介動画はこちら

 

さらに、給食でも完全米飯で地産地消に重点を置き、「南房総学」の一端を担っています。
食農教育で学んだ地域の食材を実際に給食で食べることで、より地域や一次産業への興味を深めています。

 

地域ならではの「差」を埋める学習機会創出の取り組み

南房総市は7町村が合併したため、市域が広いものの電車やバスなど公共交通機関が充実していません。さらに、豊かな自然がある一方で、社会・経済的基盤の脆弱さは否めず、過疎化・少子高齢化が進んでいます。そうなると、交通面や経済面の事情から塾や習い事へ通うことが難しくなり、都心との学習機会の「差」が生まれてしまいます。
そこで南房総市では、自然豊かな環境に囲まれながら「どこへ行っても通用する学力」を育むため、学校以外の学習機会創出の取り組みを行い、学習機会の「差」を少しでも埋め、南房総の子どもたちの可能性を育てています。

取り組みのひとつは、放課後や長期休み中に校内でおこなう学習教室。塾講師を学校に招き、発展学習や補習学習などを少人数制で子どもに合った学習機会を提供しています。算数や国語などの基本教科で学外講師を採用することは比較的珍しいことですが、学校教諭などと連携をうまくとりながら進めています。このことで、学校教諭が授業や学校運営に集中して取り組むことができ、より学校活動の充実も図ることができるメリットも。

対象となる学年や実施頻度は学校ごとに異なりますが、送り迎えの負担や経済的な負担が少なく、保護者にも好評の取り組みです。
また、学校内で放課後に実施される「放課後子どもクラブ」でも、スポーツやパソコン、基本教科のクラブがあり(内容・対象学年は学校ごとに異なる)、授業終了後にそのまま利用でき、保護者の送迎負担が少ない習い事として利用者が多くなっています。

放課後子どもクラブで英語を学習する5・6年生の児童(富山学園)

 

子どもの可能性を伸ばす「学校外教育サービス利用助成事業」

学習機会創出のもうひとつの大きな取り組みとして南房総市が実施しているのが、「学校外教育サービス利用助成事業」です。

子どもの習い事などにかかる経費を所得に応じて助成する事業。対象児童生徒は小学5年~中学3年(2022年度~)で、その全世帯を対象としています。この事業の対象となる習い事の範囲は、事業に参画を希望し市が認定した事業者のスクールで、学習塾だけではありません。サッカーや柔剣道などのスポーツスクール、習字やピアノ、英会話やパソコンなどの文化的な習い事教室、珍しい習い事では三味線やダンス、スケートボードといった教室もこの事業に参画していて、2021年度では113事業者での利用可能です。

市外の事業者や、前述の「放課後子どもクラブ」での利用もでき、子どもや保護者に合わせた幅広い使い方ができるのが大きな特徴です。年度始めに各対象家庭にクーポン券が配られ、そのクーポン券で月謝などを支払うことができるため、複数箇所の習い事で状況に応じて利用することができます。

2021年度の利用率は70.4%を超えており、家庭のニーズに合った取り組みといえます。
交通面や経済面などの家庭の事情で子どもの興味を伸ばすことが難しい家庭でも、この助成を使ってチャレンジすることができるので、子どもの興味を伸ばし、多方面への可能性を伸ばす取り組みとなっています。

南房総市の学校外教育サービス利用助成事業にスケボーパークが追加(出展:房日新聞20220225

 

「千葉県の”最南端”から”最先端”の取り組みを」

地域とともに子どもの郷土愛を育む「南房総学」、学習機会を創出し子どもたちの可能性を伸ばす取り組み、子どもたちの心と体の成長を考えた「完全米飯給食」、切れ目のないサポートを行う「15年一貫教育」など、充実した南房総の教育への取り組みを進めるのが、南房総市教育長の三幣貞夫さん。南房総エリアの小・中・高の校長を歴任し、2010年度から教育長として着任。2022年まで内閣官房教育再生実行会議委員も務めました。

三幣貞夫教育長

 

「南房総市の少子高齢化の現状、社会的・経済的な脆弱性を理解し、都市部にはない自然環境や昔ながらの地域社会などの地域特性を踏まえ、その課題解決とともに、目の前の子どもに何ができるのかを考えて事業に取り組んでいます。千葉県の”最南端”から”最先端”の取り組みを、という思いは常に持っています」

そもそも、南房総市では教育施策を強化していて、全体予算の約12%が教育予算として配分され、近隣地域と比べても教育予算が多くの割合を占めています。また各学校に配当する事業費として、学力向上推進事業補助金・南房総学推進事業補助金があるなど、各小中学校と教育委員会という現場を主体とした教育への取り組みを重要視していることが分かります。

「教育の自治が大切だということから、学校長・教員の主体性を重視しています。他の地域に比べ、校長の着任期間を長くし、リーダーシップを取りやすくしているのもその一環です。さらに、教員をサポートする支援員も人数を増やしたり、子ども園への支援員の派遣を開始し、教育的支援の必要な子どもたちへのきめ細かいケアとともに、保幼小中学校関係者の働きやすい環境づくりにも気を配っています。また、教育的支援の必要な子どもへの支援として、適応指導教室「スマイル」を教育委員会内に設置し、学校以外での支援にも力を入れています。これまでの古い形にこだわらず、長期的な目を持ちながら、日々成長する目の前の子どもたちの課題をスモールステップでアプローチしていけば、子どもたちの素晴らしい資質や能力を育むことに繋がると信じています。そして、子どもが南房総に誇りを持ち、どこへ行っても通用する学力を身につけてほしいですね」

 

南房総の子どもたちへの強い思いとともに長年の校長経験や柔軟な行動力と実行力を持つ教育長の下、積極的な教育施策を展開し続ける南房総市。これからの子どもたちの成長が楽しみです。

 

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