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2025.05.20
千倉の刺し網漁を取材してきました!
南房総の沿岸漁業の主流となっている「刺し網漁」。
今回は、南房総市の外房(太平洋)、千倉町千田地区の刺し網漁を取材する機会をいただきましたので、その様子をレポートします!
「刺し網漁」とは
刺し網漁は、魚の通り道にカーテンのように網を張り、網に刺さった魚を捕獲する漁法です。前日の夕方に網を仕掛け、翌朝に網を回収して漁獲します。千倉の刺し網漁では主にイセエビを獲ることが多いため、地元では「エビ網」とも呼ばれています。
海士漁との両方を行う漁師も多く、家族型漁業で続いてきた漁業形態です。
今回は、千倉町千田地区で海士漁と刺し網漁をしながら、民宿「マリンハウス六治郎」で調理も手掛ける山口勇治(やまぐちゆうじ)さんの小型漁船「六治郎丸」の刺し網漁を取材させていただきました。
※こちらの関連記事もご参照ください。
1.千田漁港出港 5時00分
取材日は令和7年5月14日(水)、早朝4時50分に千田漁港に集合です。
この日の朝の気温は14℃、ほぼ無風でベタ凪、天候も晴れという取材にも好条件です。
5時00分、網を入れるカゴを船に積み込み、船外機のエンジンを始動すると、直ぐに出港していきます。

この日の海はベタ凪で取材にも好条件。手前の小型漁船が今回取材させていただいた「六治郎丸」

網を入れるカゴを船に積み込みます。

船外機のエンジンを始動したら出港です。
2.刺し網漁の朝の風景
朝焼けに包まれた静かな港内に刺し網漁船のエンジン音が鳴り響き、次々に出港していく光景に胸が高まります。

「ブォンブォン」とエンジン音を立てながら次々に刺し網漁船が出港していきます。

船は港の外に出るとスピードを一気に上げ、モーターボートレースのように船首を上げて進んでいきます。

朝焼けに包まれる漁の風景はとても幻想的です。
3.網揚げ(一つ目) 5時10分~5時20分
出港から10分程で前日に網を仕掛けた1つ目のポイントに到着です。
到着すると直ぐに船に備付のウィンチで網を引き揚げていきます。
網を仕掛けるポイントは日によって2箇所から3箇所で、海士漁が重なる時期(5月~9月15日まで)は2個所の場合が多いそうです。
この日は2つのポイントに網が仕掛けてあり、それぞれのポイントで網揚げ作業は10分程度で行います。

前日に網を仕掛けておいた一つ目のポイントに到着です。

到着すると直ぐにウィンチを使って網を引き揚げていきます。
どんな獲物が掛かっているのかドキドキです。

すると、一つ目のポイントではサザエが多くかかっていました!

直ぐ近くでは別の刺し網漁船が作業していました。向こう岸には千倉大橋が見えます。
4.網揚げ(二つ目) 5時20分~5時30分
1つ目のポイントの網揚げが終わると、直ぐに二つ目のポイントに移動し、再び網を揚げていきます。

移動中の風景の美しさに目を奪われます。

一つ目のポイントからほんの数分で二つ目のポイントに到着です。

そして、再び網を揚げていくと・・・

待望のイセエビです!
「今日はイセエビが掛かる予感がします(笑)」と乗船前に山口さん言っていた予想が見事的中です!
二つ目のポイントでは型の良いイセエビが何匹も掛かっていました。
5.帰港 5時30分~

出港から30分程で漁を終え帰港です。

引き揚げた網をカゴごと港に上げます。

網の中で新鮮なイセエビが「ギーギー」と鳴いています。
6.網から獲物を外す~網を干す 5時40分~8時00分
山口さん曰く、ここからが一番面倒な作業。
獲れたイセエビ、サザエ、魚などを網から外し、「目取る(めどる)」と呼ばれる網に絡まっている海藻などのゴミを外しながら網を干していく作業です。
午前8時開始の水揚げに間に合わせるため、ここからが時間との勝負だそう。
漁師さんによっては、家族が手伝ったり、アルバイトを雇う人もいるそうです。
山口さんは奥様に手伝ってもらうこともあるとのことですが、平日はお子さんの通学時間と重なってしまうため、基本はほとんど一人で行っているそうです。

イセエビは鮮度に敏感なため、先に網から外していきます。

網から外したイセエビは一旦海水を入れた樽に入れていきます。

全てのイセエビを網から外し終えると、次は「目取る(めどる)」と言われる網を干す作業です。

網を干しながら、サザエや魚を網から外していきます。

最後に網に絡まっている海藻などを全て外していきます。

作業中、先輩漁師さんが話しかけてきました。その日の水温やお互いの今日の漁獲など、情報交換の場です。

この日獲れたサザエ

この日は一人で約2時間半をかけて作業を終え、獲れたものを軽トラックに積み込み、同じ港内の水揚げ場に移動します。
7.水揚げ 8時00分~8時20分
計量や伝票処理を漁協の職員が行い、大型の水槽に移されて作業終了です。

水槽を覗き込み、この日の千田漁港の水揚げ状況を確認する山口さん
10.終了~朝食 8時20分~
水揚げが終わると一旦自宅に帰って朝食です。
朝食後、海士漁に出る日は再び同じ船で海士漁に行き、海士漁に出ない日は網の補修作業などを行います。そして、夕方にはまた船に乗り、明日の網を仕掛けに行きます。(この日は水温が低く海士漁は行いませんでした。)
取材の最後に、山口さんにお話をお伺いました。
「今日は久々にイセエビが捕れたのでボチボチですね(笑)漁師は悠々自適に思われることが多いですが、特にこれからの季節、海士漁に出る日も増えてくるので、この仕事はハードですよ!」と笑顔で教えてくれた山口さん。
南房総の魅力と言えば「海」。
今回は、その南房総の外房、千倉町千田地区の刺し網漁を取材させていただきました。
ご協力いただきました山口さん、ありがとうございました!

ノスタルジーな情緒溢れる千田漁港
【関連リンク】
・南房総の海に生きる漁師の声と海で働く魅力 ~後編(外房編)~
・南房総の海に生きる漁師の声と海で働く魅力 ~前編(内房編)~