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房総の新緑を彩るマテバシイ

緑のハーモニーが美しい南房総の山々。鮮やかに彩るのが若葉を携えたマテバシイ

 

4月下旬から6月にかけて、南房総は新緑がまぶしい季節を迎えます。そして山々を見ていると、鮮やかな黄緑色が目に飛び込んできます。この鮮やかな黄緑色の多くがマテバシイです。新緑の時季に一斉に新芽を伸ばし、花を咲かせます。

マテバシイの新芽が勢いよく伸びています

 

マテバシイはブナ科マテバシイ属の常緑広葉樹で、南房総は全国でも珍しくマテバシイが多く分布しています。千葉県ではマテバシイのことを「トウジイ」「トウジ」「トウジュ」と呼びますが、「トウ」は中国の「唐」を表し、「外国から来た」「大きい」などの意味があります。実際、マテバシイの葉やドングリは他の椎の葉やドングリに比べるとかなり大きいのが特徴です。

マテバシイは樹が丈夫で生長が早く、乾燥・多湿にも耐え、潮風にも強いという特徴がありますが、南房総に多く分布しているのは理由があります。
元々は九州南部から南西諸島に自生する日本固有の種ですが、南房総では明治時代以降、アサクサノリを養殖するための木ヒビ(※1)や家庭用・水産加工用の薪炭材、特産品のビワなどを守る防風林や境界林、漁船の船尾や船を引き上げる際の枕木の材料などに利用するために大量に植林されたと考えられています。

群生するマテバシイ(和田地区・花嫁街道)

 

大房岬自然公園にもマテバシイが群生していますが、これは大房岬に軍の要塞施設が建設された時に、葉が良く茂るため遮音性が高く、目隠しにも最適なため、要塞の周囲に植林されたと思われます。

またマテバシイは漢字で「馬刀葉椎」や「全手葉椎」と書きますが、名前の由来には諸説あります。

① 大きなドングリは、しばらく待てば、シイの実のように美味しくなるから
② 葉やドングリが「マテガイ」という細長い二枚貝の形に似ているから
③ 手のひらを広げたような葉のつき方をしているから

などがありますが、どれも真偽は不明です。

太陽の光を受けて、黄金色にも輝くマテバシイ。マテバシイの歩んだ歴史とともに、南房総の新緑を肌で感じてみてはいかがでしょうか。

太陽の光を受けて黄金色に輝くマテバシイ

 

※1…海苔を付着させるために海中に立てた枝つきの木のこと。

 

【関連リンク】

南房総いいとこどり 南房総富浦総合ガイド資料集「大房の樹木 マテバシイ」

南房総市移住定住情報サイト トピックス「新緑の低名山が魅力です」