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多くの手間と愛情をかけて育てられる逸品―初夏の味覚「房州びわ」

害虫や強い日差しによるシミ・ソバカスから守るため、一つひとつ丁寧に袋掛けされる「房州びわ」

 

南房総の初夏を代表する味覚「房州びわ」。4月中旬から5月にかけては「ハウスびわ」、5月下旬から6月にかけては「露地びわ」が旬を迎えます。ブランド果実としても名高い「房州びわ」ですが、大きくてみずみずしいびわを育てるためには、想像以上の手間と時間がかけられています。

今回は、南房総市富浦町南無谷地区でびわ農家を営む和泉澤 昌浩さんのもとを訪れ、毎年3月から4月にかけて行われる露地びわの「袋掛け」の様子を取材させていただきました!

和泉澤さんのほ場は、軽自動車がやっと通れる細い道を進んだ先の山中にあります。びわの木は日当たりの良い急斜面に植えられており、慣れていない人には歩くのも難しい場所です。車で木のそばまで行ける場所もありますが、その道もダッシュボードの荷物が滑り落ちるほどの急こう配。車が入れない場所では、収獲したびわの実や土、肥料、苗などを運ぶために、農業用モノレールが活躍しています。

山の急斜面に植えられたびわの木。白く点在するのが、袋掛けを終えたびわ

車が入れる場所も、かなりの急こう配

車が入れない場所では、農業用モノレールが重要な輸送手段

 

袋掛けは、害虫の被害や強い日差しによるシミやソバカスを防ぎ、品質の良いびわに仕上げるために行われます。房州びわの栽培では、毎年11月から12月中旬にかけて「花もぎ」と呼ばれる作業で実の数を減らしますが、袋掛けの前にはさらに摘果を行い、生育の良い実だけを残して袋を掛けていきます。

袋を掛ける前のびわ。摘果で、生育の良いものを一つだけ残して袋を掛けていく

和泉澤さんが100枚の袋を掛けるのにかかる時間は約30分〜1時間。最近はカラスが遊びで袋を外してしまうのが悩みの種

 

作業がしやすい場所から手が届く所にあるびわはごくわずか。和泉澤さんは片手にはしごを持つと、慣れた様子で山の斜面に入っていき、はしごを設置して袋掛けを行っていきます。袋掛けは両手を使うため、作業をしやすくするために「かぎ」と呼ばれる道具を使って枝を手元に引き寄せてから行います。はしごが届かない高所では、木に登って作業を行います。

はしごを担いで木を目指す和泉澤さん。足元は栽培しているハラン(料理の仕切りやアレンジメントで使われる植物)で覆われているため、歩きづらい

「かぎ」と呼ばれる道具で枝を手元に引き寄せて袋掛け。左手に持つのが通常の「かぎ」、右手に持つのは小型の「腰かぎ」

高所では木に登っての作業

斜面にある木の上はかなりの高さで、作業には怖さも伴うという

 

びわ農家になって約12年の和泉澤さん。初めてびわ山を見た時は、「できれば平らなところがいいなぁ」と思ったそうですが、急こう配の土地は水はけが良く、おいしいびわを育てるには最適な環境だといいます。

また、「びわの木は何本くらいありますか?」とお聞きしたところ、「木の本数は分かりませんが、毎年、約3万枚の袋掛けを一人で行っています」と和泉澤さん。
そうしてようやくすべてのびわの袋掛けが終わる頃、今度はいよいよ袋掛けしたびわの収穫作業が始まります。

 

多くの手間と愛情をかけて育てられる南房総の逸品「房州びわ」。この季節ならではの味わいを、ぜひご賞味ください。

 

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