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2025.06.19
水の循環と歴史の探究!富山登山&登山道整備レポート ~富山学園7年生~

「山高きがゆえに貴(たっと)からず、樹(き)あるをもって貴しとなす」という「実語教」の一節(※1)について学ぶ富山学園7年生
5月29日(木)、保幼小中一貫校「南房総市立富山学園」の7年生(中学1年生)33人が、地域学習「南房総学」の一環として、地元「富山(とみさん)」への登山を実施しました。今回は、曲亭馬琴の長編小説「南総里見八犬伝」の舞台としても知られる富山の自然や歴史に触れるとともに、「森と海はつながっている」という水の循環を体感的に学ぶということで、その様子を取材しました!
出発式
当日の朝、富山学園で出発式が行われました。式では、今回同行した、毎月富山の登山道整備を行っている「岩井案内人の会」の皆さんと「大房少年自然の家」の神保所長、「地域おこし協力隊」の牧田さんの紹介が行われたほか、「富山を楽しんで登りましょう!」と挨拶がありました。

「岩井案内人の会」の皆さん(以下:案内人)。なんと最高齢は82歳!

大房岬自然の家の神保所長。特に安全面について指導

地域おこし協力隊の牧田さん。出発式ではオリエンテーションとして「富山」という地名の由来(天富命)や歴史について解説
登山開始!
午前8時40分、登山スタート!今回は「伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)ルート」から富山北峰を目指します。
最初の目的地は「伏姫籠穴」です。「南総里見八犬伝」の中で伏姫と犬の八房が過ごしたとされるこの場所では、洞窟内に「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の八つの玉が模型とともに祀られています。生徒たちは実際に洞窟に入ってみたり、案内人の方から八犬伝にまつわる話を聞いたりして、歴史とファンタジーの世界に思いを馳せました。

伏姫籠穴の山門

階段の両脇には巨木がそびえ、神秘的な雰囲気が漂う

実際に洞窟の中に入って確認

玉の模型の奥には「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」のそれぞれの文字が入った玉も祀られている
伏姫籠穴を出て登山道を進んでいくと、比較的なだらかで歩きやすい道が続いていましたが、過去の台風19号で被害を受けた箇所では、ロープや丸太を使って登る急斜や、ぬかるんで滑りやすい箇所がありました。

一番の難所。安全のためロープワークは一人ずつ

丸太の階段は迫力満点

ぬかるみでは足を滑らせないよう注意
また、登山道では、案内人の方から自生する植物の紹介や、双耳峰「富山」は昔から船の目印になっていたこと、日本の山岳信仰や水源「閼伽井(あかい)」について、興味深い話が語られました。

自生する植物について紹介する案内人

「閼伽井」について説明をする案内人。閼伽井とは仏様に供えるための水を汲む場所のこと
里見八犬士終焉の地
11時10分、 山頂近くの東屋に到着。里見八犬士終焉の地とされるこの場所からは、岩井の街並みや東京湾を望むことができました。そして、富山学園の先輩方が制作したという看板には、八犬士への思いを馳せて「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の文字が刻まれていました。

富山学園の先輩が作った「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の看板
北峰山頂へ到着
11時30分、ついに標高349.5 mの北峰山頂に到着!
山頂および隣接する広場からは安房と上総を分ける尾根や富山の街並みのほか、三浦半島、大島、新島、八丈島なども望める絶景が広がっていました。天気が良ければ富士山やスカイツリーも見えるそうです。
さらに江戸時代、鋸南町にある大黒山はクジラの見張り台としての役割を果たしていたそうで、200~300頭もの群れが現れた際には漁港で待機する捕鯨船に合図を送っていたという「捕鯨の歴史」も紹介されました。

富山山頂(北峰)からの眺望
▲展望広場からの眺望
登山道整備&クヌギの植樹
昼食後の午後0時20分。東屋に戻り、神保所長から登山道整備の説明が行われました。
「カマやハサミ、ノコギリなどは“危ない道具”ではなく、“正しく安全に使う”ことが大切です。今日はクヌギの植樹も行いますが、植えっぱなしではなく、今後も生長を見守る必要があります」と指導がありました。

整備道具やクヌギの苗の説明を行う神保所長
その後、生徒たちは道具や苗などを手分けして持ちながら、「福満寺ルート」から下山を開始。5合目付近からは、先輩たちが植えたクヌギの苗の生長を確認しながら進みました。

富山学園の先輩が植えたクヌギの苗。竹の支柱が目印。生長を促すため、周辺の草刈りを実施
そして、今回の整備の目的地3〜2合目付近に到着。7年生は3チームに分かれ、「枯れ枝や落ち葉の除去」「堆積した土の移動」「11本のクヌギの苗を植樹」を行いました。

大きな枝は登山道の脇に移動

堆積した土をスコップで取り除く

クヌギの植樹の様子。この苗も富山学園の先輩たちが育てたもの

細いクヌギの苗が倒れないよう、竹の支柱にやさしく固定
整備中、通りかかった登山者から、「ありがとう」と声をかけられると、生徒たちは嬉しそうな表情を浮かべていました。

全員が協力し合い、登山道がキレイになりました!
学園到着
帰り道、山から流れ出た川を見て、水の循環について再確認。そして午後3時20分、無事に学園に到着。到着式では、サポートしてくれた案内人の方々に生徒から感謝の言葉が述べられました。

「森と海はつながっている」を実感
今回が初登山だったという生徒に話を聞ききました。
「地元ですが富山の登山は初めてで、正直とてもドキドキしていました。整備が必要と聞いていたので、不安もありましたが、実際に自分で体験してみて、皆さんの苦労がよくわかりました。歴史や水の循環も学べて、とても楽しかったし、登山道がきれいになって嬉しいです!」
富山の自然と歴史を体感した生徒たち。今後は3年間かけて、森と海の関係性について学んでいきます。今回植えたクヌギの苗の生長とともに、地域や自然とのつながりを育んでほしいと思います。
※1…実語教は江戸時代の寺子屋で使われた道徳書。「山が高いだけでは価値があるとは言えず、そこに豊かな木々があることにこそ意味がある」という教えは、見た目ではなく本質を大切にする姿勢を説いている。
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